俺の最初の旅の話をしよう。
俺はバータータウンでヒューマンの師匠からアーチャーとしての生き方を学んだ。俺は1年と1日師からみっちりと教えを受けた。
アデプトとし生きてく時間の始まりだ。
師は俺にアデプトとしての始まりを共に進む仲間を紹介してくれた。
一人はドワーフのハイゼマンという元素魔術師だ。プレゼント好きの男だ。ほかの奴(ドワーフ)に比べるといくぶんましだが。もう一人はトゥクースレスと言うトゥスラングだ。勇敢かどうかは分からないが、よく喋る奴だ。
俺達は、目的はそれぞれながらも、とりあえず冒険の舞台(パーレインスの事を指している)を求め、ヘイブンに向かった。
一週間ほどたち、ある村にたどり着いた。その村では”七流星”(※)と呼ばれる英雄伝説があり。えらく歓待された。この村の”ルイベック”という名前も七流星の一員のヒューマンからとったものらしい。
※七流星の伝説に関しては後述する。
俺達は宿屋の中のルイベックの間(部屋に名前がついてるかはさだかではないらしい)で歓迎された。
ここは伝説のルイベックが村人達に誓いを立てた場所で、部屋の中心に大きな岩があり、そこの頂上は俺の腰ぐらいの高さが有った。そこに古びた剣が突き刺さっている。これがルイベックの剣と言うらしい。
歓迎の宴は夜更けまで続いた。ヒューマンの老吟遊詩人(この者はスキルで奏でていたらしくアデプトではないようです)が七流星のサーガをダラダラ歌いつづけた。村人たちはえらく盛り上がっていた。どうやら村の新しい出発にルイベックと言う英雄が強く関わっているようだ。宴は英雄達の仲違いのシーンまでいき、そこで村人の野次でお開きになった。俺は長旅で疲れていたし、いい加減この騒がしさにも飽き飽きしていたので調度良かった。宴会場を後にするときトゥクースレスがさっきの話を聞こうとドワーフにしきりに話しかけていた。元気なトカゲだ。
歓迎の宴が催された翌日、村人のトロールのダダルから
「自分の畑でクッリッターを目撃した」
との相談をうけた。この村では歓迎のかわりにしばらくアデプトは滞在するという決まりがあるようだ。アドバイザーがいない為の手段なのだろう。状況がどうあろうとアデプトは村人の守り手なのだから、早速調査に向かうことにしたんだ。
現場に着いた俺達は早速それぞれ探索に入った。俺達は直ぐに怪しげな足跡に気づいた。俺は足跡、謎の液体などにより巨大な蜘蛛のような物ではないかと考えた。スカージの間にずいぶんと野外は危険な世界に変貌した。昔は害のなかった生き物が恐ろしいクリッターとなっているからだ。
ハイゼマンは周辺の植物に話を聞いて(元素魔法は植物と会話できる)蜘蛛の向かった方向を調べた。足跡は林まで続きそこからは消えてしまっていた。トゥクースレスが先頭に立ち‥‥よく前にでたがる奴なんだ。で、林に入っていった。俺は慎重に進んだ。奴がクリッターならそこそこの頭があるはず。うかつに進めば、奴の餌場に無防備に入ることになる。
俺の警報は前方の木々の塊を示した。もし俺の考えが正しく化物が蜘蛛のようなら林に入ってから木々を足がかりに上に上がったのではと思ったからだ。
俺はゆっくりと正確に石弓の先端をそちらに向けて、そっと仲間に警告を放った。
俺の考えは当たっていた。木々の隙間から醜悪な顔が覗く。もう少し気づくのが遅ければ、この化物に不意討ちを食らっているところだった。木々を揺らし葉の影から現れたのは、巨大な蜘蛛の化物だった。後でわかったのだが、こいつはクリッターではなく更に凶暴な、ホラーコンストラクトだったんだ。
化物は俺達の前方に降り立った。トゥクースレスが素早く近づき連続して剣を当てに行った。俺は慎重に狙いをつけマークを入れようとした。しかし、俺の鉤爪のマークは蜘蛛に当たらなかった。ここでうすうすこいつがただの化け物ではないと直感したんだ。俺は矢を巨大な体に打ち込むことに変更した。
蜘蛛はトゥクースレスの攻撃を受け、俺の矢を受け、ハイゼマンの魔法の石礫を受けてもなかなか怯まなかった。その上化物はとんでもない攻撃をしかけてきた。振り上げた前足に氷の刺が生えたんだ。俺の石弓を持つ手に力が入る。確実に矢は当たるが決定打にかける。やはりマークをつけておくべきだったかと不安がよぎったんだ。(ここでヴェフル氏は言葉を濁した。トロール的なプライドの為と思われる)
化物の攻撃はトゥクースレスを襲った。トゥクースレスは氷の爪の攻撃に動じず、輪をかくように攻撃を繰り替えす。俺は心の中でこの勇敢な男を賞賛した。
トゥクースレスは恐ろしい攻撃をギリギリでかわし、まるで楽しんでいるよう戦った。
3方向からの攻撃に徐々にさすがの化物も弱っていくのがわかる。トゥクースレスが横に飛びのきながら切りつけたとき化物が最後の抵抗に出ようとした。体を大きくのけぞらせキラキラと光る、網の様なものをトゥクースレスに向けた。俺はすばやく矢を放った。矢は腕の付け根に刺るが体勢は崩れない。トクゥースレスはまだ化け物の変異に気付いていなかった。
化物の体が少し大きくなったような気がした瞬間、化物の頭部に石礫が減り込んだ。化物は最後の咆哮を上げながらゆっくりと倒れた。
この戦いはこれで終わった。あの時はかなり俺も緊張していたんだ。しかし、こんな手強い奴は初めてだったからだ。そして、なかなか頼もしいメンバーに囲まれていることを実感した。そして、アデプトへの道程の長さも実感した。まだまだ俺は強くならなければならないとな。
俺達はその巨大な化物の死体から銀色の網を見つけた。これが英雄達が持って帰る『戦利品』という奴だ。
戦利品を手に村に向かうと村でなにやら騒動起きてるようだった。人々の怯える声や怒鳴り声が聞こえる。トゥクースレスが直ぐに喜びの声を上げ走り出す。考えなしに打ち出された矢のようなんだ。
トゥクースレスの後を追いハイゼマンと俺も走った。家並みを抜けて宿屋(ここの村ではケーアの入り口を指しているようです)の方へ。人垣できていてトゥクースレスが擦り抜けていく。そして直ぐに剣劇の音。人垣の向こうに(なんてこった)骸骨が剣を持っていやがる。そしてトゥクースレスはくるくると回りながら切りつけていたんだ。
村人は遠巻きに声援をおくりトゥクースレスは嬉々として剣を振るっている。俺とハイゼマンは援護射撃を始める。3方からの攻撃に骸骨は再び崩れて有るべき姿に戻った。
回りを見ると傷を負ったものもいた。しかし表情は期待と希望にあふれている。そうこれが俺達の仕事で生き方だ。何人かは歓声を上げている。その歓声にまじって宿屋の中に悪者がいるという警告も聞こえた。
聞こえるが早いかトゥクースレスが宿屋の中に入っていった。俺達も後を追った。扉を潜り抜ける。
部屋の中央にローブ姿の人間の男が一人。(ローブの刺繍からはネザーマンサーと思われます)部屋の巨石の前で何かをしている。そう、ルイベックの剣の前だ。そして俺達とローブ姿の間に3体の骸骨が立ち上がった。
確実に骸骨を粉砕するか、ローブ姿の男に矢を打ち込むかだ。この男が危険なことはわかった。奴に対して警報が頭の中でなっている。視界の中に踊るような姿が加わる。トゥクースレスだ。また、あのトカゲは骸骨に一撃を与えローブ姿への距離を縮めてる。あの無謀さと行動力には驚かされてばかりいた。
俺とハイゼマンは向かってくる骸骨に数発の矢を食らわせたあと、俺は石弓を後ろに飛ばした。骸骨との距離が迫りすぎたんだ。もう、弓は撃てない。
骸骨相手に殴りあうとは驚きだったが、この骸骨は同族のじゃない。俺は力一杯拳を握り締め、目の前の骸骨を砕いた。
目の端でトゥクースレスがローブ姿に剣を打ち込んでるがなにか回りの空気が弾いているようだった。男は視線するトゥクースレスに向けないのだ。トゥクースレスはなにか大声で叫びながら切りつけていた。ローブ姿の態度がいたく気に入ったらしい。
援護に向かおうかと思ったが、ハイゼマンをほうっておく訳にはいかず、横にいた骸骨を粉砕することにしたんだ。魔術師に殴り合いは向かないからな。
しかし、ここで思わぬ反撃を受けた。力を過信した俺はかなりの大振りになっていた。殴りにいったあとのすきだらけの脇に骸骨のもつ剣が深く突き刺さった。俺が入り間合いがあいたハイゼマンが、呪文で骸骨を攻撃する。俺も痛みに堪え殴り飛ばす。俺とハイゼマンが骸骨を倒してる間も、トゥクースレスの男への攻撃は続いていた。
俺も再び石弓を拾い矢を男に打ち込む。しかし、矢は空気の壁に阻まれ当たらない。呪文も男に当たる前に方向をかえ男には当たらない。ハイゼマンが男がルイベックの剣を手に入れようとしていること、それが大きな危険につながることを告げている。この男が危険なことは十分わかっている。しかし、この空気の壁を除去できなくては止めることすらできない。
その時トゥクースレスが下から滑り上げるように剣を動かし、速く力強い一撃を食らわした。その一撃は空気の壁を突き破り男の体に突き刺さった。
男はゆっくりと表情を無関心から怒りに変えていく。この男がどれだけ強大かは、この男がいままで、俺達になんの行動もせずにいたことでもわかる。
男はゆっくりと部屋を見渡しハイゼマンのところで視線とを止めた。ハイゼマンの微かな呻き声が聞こえる。ハイゼマンは硬直したように動けなくなっていたんだ。
トゥクースレスは再び男への攻撃を始めるが、空気の壁は相変わらず男の回りに存在するようで傷を負わせることができない。
今のままでは俺達はこの男には勝てないと俺は考えた。それはトロールにとっては愚かな考えの気がするが、俺はアーチャーだ。真実を観察して目的をいる為の方法を冷静に考える事のほうが大事なんだ。(この時、ヴェフル氏は拳を握り、私の方に向けた)
一度引くしかないと思ったとき外から楽の音が聞こえてきた。昨日の晩の七流星のサーガの下りだ。ルイベックの剣に七人の英雄が誓いを立てる。「我々七人の心はこの剣とともに。もし、裏切り暗黒面におちいるようなら、この剣がその者を殺すであろう」とかいう歌詞だったと思う。
そして、昨晩の人間の吟遊詩人が扉から顔を覗かせて、ぼそりとルイベックの剣を取れと俺に言ったんだ。俺はなぜかは知らないがこの老人の言ってる事が矢を打ち込む線だと直感したんだ。
俺はトゥクースレスに剣を取れと叫んだ。トゥクースレスは飛び跳ねて岩の上に上がろうとした。ネザーマンサーは顔を覗かせた吟遊詩人に呪いの言葉をはき、岩の上に上がろうとしているトゥクースレスの足を払った。矢は外れたが視線は通ったっていったところだろう。
トゥクースレスは岩から落とされたが、素早くバランスをとってネザーマンサーの前で剣を抜きはなったんだ。
ネザーマンサーは苦渋の表情を浮かべ、俺達と吟遊詩人に復讐の言葉を吐いてその場から逃げ去った。
かくしてトゥクースレスが剣を所持することになった訳だ。このまま村に置いていく事のほうが危険と判断したんだ。
そして我々は次の村に向かうことにした。
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